鞄の中にいくつもの絡まった矢印が入っています

ほどけないまま重くなる 

鞄と傘を抱えて

なにもかも かみ合わない日だったね

電車を待っていた

ところ

ゆるやかに接近する白銀の列車

タボ タボ と降る雪のプラットホームを

わずかにオーバーランした

ああ、東京の雪は重い ぼたん雪

この世界はいったいいくつのボタンで

留めてあるのかしら

ああ、ボタンをかけちがえたら、そうだよ

ああ、もとの位置に戻さなくちゃ・・・

運転席から出てきた運転士が

驚くほど薄着の紺色ジャケットをひるがえし

雪だらけのホームを駆け出して最後尾に乗り込み

ブルンブルン・・・

オーバーランした列車を

定位置に 

戻している

やっと 

やっと 

やっとのことで

ああ、あなたも少し かみあわない日だったのですか

最後尾の車両から運転席へと 

また走ってくる運転士

その紺色の薄い肩に降る

いくつもの

水を含んだ

重たい

ぼたん雪